ペットアーカイブ・犬 犬に関する飼育や健康、行動学の書庫です
犬の噛みつき事故 - 危険な犬種というのは存在するのか?- 犬の噛みつき事故はアメリカで深刻な問題です。アメリカ疾病対策予防センター(CDC)によると、毎年470万人が犬に噛まれているといいます。このうちおよそ17パーセントの人が医療処置を必要としており、噛まれた人が亡くなるという悲劇的な事例も年に約10〜20件発生しています。CDCは、アメリカでの犬の噛みつき事故を「流行病」と見なしています。
過去10年間で最も致命的な事故に関わった10種は、ピット・ブル、ロットワイラー、ジャーマン・シェパード、ハスキー、マラミュート、ドーベルマン、チャウチャウ、セント・バーナード、グレートデーン、そして秋田犬の順となっています。
増加するこの問題に対処するため、地域によっては、危険だと思われる特定の犬種、特にピット・ブルやロットワイラーの所有を禁止しているところもあります。本当に特定の犬種が他よりも危険なのでしょうか:?
[犬種の特徴]
犬の行動がどの程度遺伝的性質によるものかを特定するのは難しいことです。人間の人格がどの程度先天的で、またどの程度後天的なのかを知るのが難しいのと同じなのです。特定の犬種が他よりも攻撃性を必要とする仕事を行うために犬種改良されたことは事実です。例えばピット・ブルは、他の犬または動物と闘うスポーツをするために犬種改良されました。遺伝的性質として、ピット・ブルは他の犬よりも獰猛な傾向があると分析する人もいて、実際に過去20年間、ピット・ブルは致命的な事故に他のどの犬種よりも多く関わっています。しかし、ゴールデン・レトリーバーやコッカースパニエル、ヨークシャー・テリアといった、攻撃性を持つように犬種改良されていない犬種も同じように致命的な事故に関わっているのです。単に特定の犬種の人に怪我をさせる能力が他の犬種より高いというのも事実です。例えば、グレートデーンは、噛む確率は小さい犬と同じですが、噛めばマルチーズが噛んだ時よりも深刻なダメージを与えます(小型犬でさえも子供にとっては脅威ですが)。
アメリカ獣医師会(the American Veterinary Medical Association)とCDC、全米人道協会(the Humane Society of the United States)によって行われた研究では、過去20年間の犬による噛みつき事故の統計が分析され、特定の犬種が遺伝的に他の犬種よりも危険であるかは統計ではわからないことが明らかになりました。その研究によると、どの年も、その年に最も人気のあった大型犬が同時に致命的な噛みつき事故を起こした犬種のリストにも載っているという。例えば、1970年代にはドーベルマン・ピンシャーによる致命的な噛みつき事故が多かったのですが、それはその頃ドーベルマンの人気が大変高く、ドーベルマンがたくさんいたからに他なりません。さらに、ドーベルマンが大型なので、噛んだ際により危険だったこともあります。1980年代ではピット・ブル、また、1990年代になるとロットワイラーによる致命的な噛みつき事故の件数が同じ理由で多かったのです。また、同研究の中で、致命的でない噛みつき事故についての信頼できる統計がないので、小型犬がどの程度頻繁に噛みつくのかは不明ということになっています。
[飼い主の責任]
この研究は、今まで多くの獣医が信じてきたことを裏づけています。つまり、ほとんどどんな犬でも、訓練や環境によって攻撃的にも非攻撃的にもなりえるということです。ペットが他の人にとって安全であるかどうかに、飼い主が大きく関わっているのです。自分の犬が脅威とならないようにするためのステップをいくつかあげてみましょう。[ペットをつなごう]
致命的な噛みつき事故全体の82パーセントはつながれていない犬が起こしています。公共の場であれば、どこであっても丈夫なひもで飼い犬をつなぐことが噛みつき事故を防ぐ大きな第一歩となります。また、他人に自分の犬に接するよう勧めないようにしましょう。慣れない人や環境は犬を驚かす可能性があります。飼い犬をひとりで屋外におく場合は、6〜8フィート(犬の大きさによる)のフェンスで庭を囲む必要があります。[子犬を社交的に育てましょう]
全ての予防接種を受けさせ、獣医の許可を得たら、子犬教室や公園、ペットショップに子犬を連れて行ってください。子犬が安心して人間や他の犬と交流できる場所に連れて行ってあげましょう。そして、上手に接することができたらほめることを忘れずに。[卵巣摘出・虚勢手術を受けさせましょう]
致命的な噛みつき事故の約80パーセントは去勢されていないオス犬が引き起こしています。犬は去勢されると、侵入者に対する攻撃的な態度といった本能的な縄張り意識をいくらか薄らぐものです。[噛まないようしつけましょう]
犬は、してはいけないと教わらない限り、飼い主の手から家具に至るまでくわえたり、噛んだり、噛みついたりします。犬が噛みついてきたり、自分もしくは家族に向かって唸ったときは、すばやく音を出して犬の注意をそらせてください。手をたたいたり、大声で「いたっ!」と叫んだりするといいでしょう。そして、噛んでもよいローハイドtやおもちゃに関心が向くようにしてください。また、犬が適切な物を噛んでいるのを見たらごほうびをあげてください。[犬の行動を監視しましょう]
飼い犬が噛みつかないようにするにはこの部分が一番重要かもしれません。飼い主にとって、こんなにかわいい愛犬が他人の脅威となりうることを否定したくなるのは当然です。しかし、愛犬の行為が以下のどれかに当てはまる場合は、獣医に相談してください。- 家族に向かってうなったり、飛びかかったり、噛みついたりする。
- 他人に向かってうなったり、飛びかかったりする。
- 他人を異常に恐怖する。
飼い犬が攻撃的または危険な存在になりそうだと思ったら、獣医に頼んで動物行動学の専門家を紹介してもらってください。犬が攻撃性の治療を受けている間は、公共の場に連れて行くときは特に気をつけるようにしてください。他人がその犬に接しようとしたら、必ず注意を促すようにしてください。
これらの決まりを守れば、飼い犬が噛まなくなるというものではありませんが、確実に噛む確率を下げることはできます。しっかりつながれていて、きちんとしつけられている犬は、犬種に関わらずどんな犬でも全く安全なのです。実際は、無責任な飼い主こそが、どんな犬よりもずっと危険なのです。


